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とにもかくにも伏線回収コンボの巻。
黒エルフの元道化は、どうやら「狂乱の魔術師」らしい。以後、勝手に「狂乱(仮)」と呼称する。
それで、タンスじーちゃんの調査とも繋がる。迷宮各所に記された古いエルフ文字(しかも酷い癖字)すべてが同一人物によると推理していたから、それはたぶん狂乱(仮)が迷宮を作るために書いたものだと思われ。
ライオスが生ける絵画の中で道化と遭遇したのは過去へのトラベルではなく、記録データとの接触だったようで。なぜなら狂乱(仮)がライオスに「絵の中をうろついていたな」と言ったから。つまり、生ける絵画の魔法を管理していたから、中に入ったライオスのことも認識したってこと。
その狂乱(仮)は、デルガル王を探している模様。
つか、デルガル王はトールマンだろうから、そもそも千年も生きるはずがなく。あー、それで城と城下町すべてを迷宮にして封じたのか。タンスじーちゃんの言う「死んだ者が生き返っているのではない。ここでは死自体が禁じられている」というのも、死を禁ずることでデルガル王と周辺環境を永遠のものにしようとした? 狂乱(仮)の王への思い入れは、かなり強いようだからね。
マルシルが狂乱(仮)を狙撃した際に「子供……!?」と思ったことから、実は狂乱(仮)本人も時間を止めている可能性が高い。マルシルの年齢は不明だが、さすがに千歳ではないはず。となれば、千年前の黄金城時代からいた狂乱(仮)のほうが年上。にもかかわらずマルシルには狂乱(仮)が子供に見えた。つまり、狂乱(仮)は成長していないことになる。て言うか、狂乱(仮)は道化本人ではなく、道化が自身をコピーして迷宮のシステムとして設置したものかもしれない。オーク族長の妹さんが言った「必要以上に迷宮に干渉すると奴は現れる」ってのが、普段は稼働しておらず必要なときだけ起動するアプリみたいな感じでサー。
で、狂乱(仮)の身勝手な施術が城と城下にとっては大迷惑以外の何物でもない。何せ、不老不死ではなく、死んでも死ねないで霊として彷徨うわけだからね。霊たちの態度(苦しむファリンを気遣う様子や、狂乱(仮)を見て「ダメだこりゃ」と口ごもる表情、そしてライオスたちに何かと味方してくれるところ)が、そう考える根拠。城と城下の住人たちは、狂乱(仮)を止めてほしがっているに違いない。
しかも皮肉なことに狂乱(仮)の求めるデルガル王は、迷宮が地上と繋がった際に亡くなってるからね。穴から這い出て島の者たちに「すべてを与えよう」と言ったときには迷宮の外に出ていたわけで。なので呪いで禁じられていた死を王は得ることができた。
ファリンが狂乱(仮)に従うのは、やはり炎竜と魂が混じったことと、もう一つある。
マルシルの蘇生術解説によると、ファリンを一瞬だけ迷宮の一部ということにして術を使った。でも、本人は一瞬だけと思ってるが、そもそもマルシルは術の終わりに気絶している。つまり、展開した術をきちんと結べていない可能性が高い。ということは、ファリンは未だ迷宮の一部ということなのだよ。そりゃ狂乱(仮)に操られるわけだ。
炎竜が
ほとんどを寝て過ごす習性に反して歩き廻っていたり、通常は現れない五階にいたのは、狂乱(仮)にデルガル王を探すよう命令されていたから。つまり、狂乱(仮)が余計なことをしなければ、ファリンは未消化で普通に蘇生できていた。狂乱(仮)許すまじ!
二巻、三巻と“さわやかくん”だったカブルーは、実は顔だけでなく腹も黒かった。シュローへの接近なんて詐欺師そのもの。
宝石と麦に関しては疑うのも仕方ないが(つか麦は実際に頂戴しちまってるしなーライオス)、
ずっと前からトーデン兄妹
の化けの皮が剥がれる瞬間を待ってた、なんてのは粘着質が過ぎる。嫌だこいつキモい。
君の期待を裏切って悪いが、ライオスもファリンも裏なんてないからね。単なるお人好しなバカってだけで。ついでに言うと、それ言ってる自分こそ、さわやかだった化けの皮が剥がれてるぞ(大笑)。
にしてもなー。ライオスが稼ぎに関して偽善者(と言うよりも思慮の浅いお間抜けさん)だというのは、いちおう認めるとしてもね。そこまで嫌悪する理由が判らない。幼児体験でのトラウマでもあるのか?
狂乱(仮)と言いとカブルーと言い。作者って、バカヤロウの顔にアミ貼るの、わざとやってます?(笑)
いや、二人とも自分の価値観がすべて、それ以外は許せない、という独善者って点で似た者同士でしょ。
シュローは東方の、たぶん名家の倅(武者修行ってことは次男あたり?)。
ナマリは、父親が島の名士で不祥事により失脚。
マルシルは、学校はじまって以来の才女。
ドオン
チルチャックは、がめついことで悪名高く。
ライオスのパーティーが有名な理由も、よーく判りました(笑)。
ホント、伏線回収しまくりの巻でしたね。
六巻は、また半年後かな?
そうそう、ライオスに言ってあげたい。
そんなに落胆するな。おまえが真の『迷宮グルメガイド』(監修・センシ)を書けばいいだけのことさ。
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第2、3巻を見る限り、完全にネコ被ってますね(あれ? だから「カブルー」なの?)。完璧さわやかなイケメン迷宮ビギナー。宝虫に全滅とか、ライオスたちに数段あるいは一桁劣る低レベルさ。
ところがぎっちょん。第5巻で見せたカブルーの戦闘力は何ぞ? 死体回収屋の仕掛けた幻術を見破り一人ずつ撃破した、その手際。そして取り引きを持ちかけた残りに対する奇襲。↑のビギナーぶりが嘘のような高レベルでしょ。
一つひとつ見ていこう。一人目、肘へ逆関節気味に一撃と同時に顎を砕く。二人目の銛をかわしざま、右顎か首にパンチ一発。一団のボスの喉を銛で突きつつ腰の短剣を奪う。その短剣で四人目、五人目とも首をかっ切った模様。それだけのことをやっておいての台詞が、人体の構造が皆同じだから「やっぱり人間は楽でいいな」ときたもんだ。
カブルーにとって殺人は「楽」なこと。つまり、冒険者になる前の経歴が想像できる。兵士? 傭兵? いや何か違うな。
シュローに、ロクな情報も持っていないクセに「お力になれるかもしれません」と取り入る、その度胸。兵士の素養とは違うね。人をほぼ一撃で無力化する動きの良さ、表情と言葉で初対面の相手ですら懐に飛び込む人心掌握術、こーゆースキル持ちを知ってるぞ。いや、もちろん創作物の中でだけど、知ってるぞ。ほら、某3年E組の生徒たちだよ、その担任だよ。
そう考えつつ、もういっぺん読みなおしてみよう。死体回収屋どもを殺ったあと、シーサーペントに襲われてるシーンで、カブルーはどうしてた? 「いやどこだよ頸動脈」って困ってたろ。
あー。こいつ元殺し屋に違いないね。それも、かなり腕の立つ殺し屋。宝虫にすら全滅したのは、単に魔物に慣れていないから。シーサーペントの頸動脈が判らず攻めあぐねてたのと同種の未熟。しかし対人殺傷能力は超一流。しかも、人の命を何とも思っていない。
つまり。
何らかのきっかけで殺し屋稼業に見切りをつけ、冒険者として再始動すべく島にやって来た。
きっかけとは、たぶん自分の人生を振り返らざるを得なくなる出来事があって、このままではダメだとか思ったあたりかな。某タコ生命体みたいなね。
で心機一転、冒険者になって迷宮を攻略して島民を救う。それが叶えば、殺し屋時代の自分も肯定できる。殺し屋スキルがあればこその攻略だから、と言い訳できる。自分は終始一貫して正義だと胸を張れる。
だからなんだろーね、裏のないライオスが許せないのは。ライオスの善意が肯定されてしまうと、自分の正義が否定される。それは受け入れられない。だから、ライオスこそが悪でなければならない。と。
おーおー、歪んでるのー。
では、そんなカブルーを仲間は、どう見ているのか?
↑の「人間は楽でいい」という殺しの台詞にせよ、トーデン兄妹「の化けの皮が剥がれる瞬間を待ってた」にせよ、隠さず口にしていることからすると、彼の経歴と歪んだ性格は、仲間には周知されていると思われ。
それと、死体回収屋たちを殺ったときの仲間の態度もね、イケイケだったでしょ。カブルーが最後の一人を屠るとき、その断末魔を平然と聞いていたり。死体の後始末(証拠隠滅)も淡々とこなしてたり。こりゃ、残り五人も手慣れてるな。ひょっとすると六人全員が見た目とは裏腹に元は裏社会にいたのかもしれない。
うわっ、闇パーティーだわ。怖えぇ。
逃げろー!