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『大怪獣ガメラ』
記念すべき一作目。シリーズ唯一のモノクロ作品です。
ゴジラを意識してでしょう、ガメラは突如出現した大災害として扱われています。その災害を人類の知恵と勇気でどうやって排除するか、という、まさにゴジラ的なストーリ展開。
ただ、ゴジラと違うのは、偶然ガメラに助けられたことによってガメラにご執心となった少年の存在。このガキが必死な大人たちを振り回します。振り回して無自覚に作戦の邪魔をします。迷惑なクソガキです。しかも毒電波入ってます。最後のシーンの台詞を聞いて、こいつガチで狂ってると確信しました。いちおう主人公的ポジションですが、これは子供が観ても共感できません。このガキさえいなければマシな物語になったのにと思うと残念でなりません。
肉食性のゴジラと違って、ガメラは熱エネルギーを直接摂取できる生物です。アトランティス大陸にいたらしいとのこと。ひょっとしたら平成ガメラみたく、古代文明が開発した生体兵器なのかもしれません(劇中では、そこまで突っ込んだ考察はされなかった)。で、炎を直に喰えるため、山火事の現場とか発電所とかコンビナートとかに行くことで人間社会にとっての脅威となってしまう。ガメラに特に敵意はないんですよね。ただ、ごはん食べたくてウロウロしてるだけ(苦笑)。
設定に何ら問題がないにも関わらずB級色が濃いのは脚本の甘さのせいでしょう。上に述べた電波な少年の存在もですが。エスキモー村に代々伝わる、ガメラについて記された石。村長が決断して日本の教授に手渡したその石が、実は何の役にも立っていない(をいをい)。最終手段、最後の希望である「Zプラン」は唐突に話の中に出てきて、観ている人が理解できないまま、ガメラ撃退に使われます。ゴジラを倒した、あのアイテムとはえらい違いです。本の締め切りが厳しかったのかな? 東宝にできて大映にできないってのが不思議ですね。
唯一、東宝に勝ったのは、火でしょうか。ガメラの武器は攻撃や飛行に使う火炎噴射ですが、これには本物の炎が使われています。ガメラが口から吐くシーンも本物の火炎。炎を食べているシーンは、それの逆回し。よくスタジオで事故が起こらなかったものです。
ちょいとした余談。エスキモーの村長を演じた吉田義夫さんは、東映『悪魔くん』で初代メフィストを演じられました。また円谷『ウルトラセブン』の一エピソードで偏屈な地質学者を演じられました。というほどに、特撮に縁をお持ちの役者さんです。
ちょいとした余談・その2。空飛ぶ円盤(ガメラ)を目撃した田舎の爺さんを演じられたのは左卜全さん。後に「ズビズバー」で映画に興味ない層にも有名になりましたね。
ちょいとした余談・その3。エスキモー村を訪れた教授役の人は、二時間ドラマの常連でありゴチメンバーでもあった、あの人のお父上です。
『大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン』
好評を受けての第二弾。この作品から総天然色となります。
ゴジラが二作目で急速劣化したのに対し、ガメラはむしろ二作目で完成度がグンと高くなりました。あくまでも「昭和のレベルで」という但し書きは付きますが、ストーリに隙がありません。なので退屈することなく物語が進行します。しかしながら、子供はたぶん退屈するでしょうね。
つまり大人向けの物語なのですよ。シリーズ中、唯一この作品のみ見事に子供がストーリに関与しません。
戦時中にパプア・ニュー・ギニアで巨大オパールを見つけたものの持ち帰れなかった男が、仲間を集めて取りに行かせる、という幕開け。オパールの隠し場所は現地の住民が禁忌とする地域で、そこに強引に入り込んだ結果、災厄と恐れられたバルゴンを現代に甦らせてしまう結果に。という、怪獣モノとしては王道の展開ですね。神戸→大阪と侵攻するバルゴンと、そのために起きた大火災に釣られて飛来した空腹ガメラとの闘い。その足下では人間たちの欲望による争いが続き、それが自衛隊の対怪獣作戦にまで影響してしまう。グラサンかけた悪役氏の悪役ぶりが、とにかく良い味を出してます。観ていての悪役に対するイライラ感ともども、東宝で言えば『モスラ』が雰囲気的に近いかな。
これ以降、ガメラは様々な怪獣と対戦するわけですが、とにかく相手が、どいつもこいつも武器満載で困ります。ガメラは火炎しかないのに。あるいは、ベビーフェイスのガメラに対して、敵怪獣は凶器を隠し持つヒールということなのかな。ガメラ・シリーズはプロレスなのかな。
第二作にして、ガメラは宇宙空間をも飛行できることが判明。すごいぞガメラ!
ちょいとした余談・その4。主人公の兄でオパール回収のリーダーを演じた夏木章さんは七作目まで、いろいろな役で出演されました。他にも常連俳優さんはおられるのですが、とにかくこの人がお顔もお声も特徴的なので探しやすく楽しいです♪
ちょいとした余談・その5。オパール回収の一味が乗った船の船医役に、あの藤岡琢也さんが出ておられます。
ちょいとした余談・その6。この作品でガメラの内臓役だった荒垣輝雄さんは、『ウルトラマン』でも怪獣の内臓を務められました。
『大怪獣空中戦 ガメラ対ギャオス』
ガキの主役が復活した作品(笑)。とは言え、全シリーズの中では、かなりマシな子供です。良識も持ってるし。
前作ではガメラはバルゴンによって凍結されただけでしたが。今作では腕を斬られて流血するという、かなり厳しい闘いでした。とにかくギャオスの武器群が凶悪すぎてもう。
加えて、ギャオスが食肉性で人肉(と言うか人血)を好むという恐怖設定。富士山の噴火を調査に向かったヘリが墜落。しかし搭乗者たちの遺体が一つも見つからないという序盤の伏線。で、ギャオスが登場して新聞記者をむんずと掴み……咀嚼! 名古屋に飛来した際は新幹線を襲い、乗客たちを……咀嚼! 怖い怖い。子供にはきついんじゃないかな(て言うか、子供の頃のオイラにはホント怖かった)。
一作目では曖昧にしていたことが明確に確定した作品でもあります。つまり、ガメラは人間の子供に強い好意を持つ、という特徴。
一方で、対怪獣作戦で自衛隊がかなり頑張った作品でもあります。作戦立案の中心が子供なのは、まあガメラ・シリーズということで。
さらには、前作同様に人間の欲(高速道路建設に関わる土地売買問題)も絡んでくるという大盛りぶり。
子供向け作品を意識しつつ、大人の事情や軍事作戦もきちんと描いた、バランスの取れた作品というのが妖之佑の抱いた印象です。ギャオスのデザインも、かなりのものですし♪
主題歌『ガメラの歌』があり、これもまた子供向けを意識した構成ですね。
ちょいとした余談・その7。工事現場監督の部下の一人・八公を演じたのは螢雪太郎さん。この人のお弟子さんにあたるのが、特撮では『牙狼 -GARO-』シリーズの倉橋ゴンザ役で知られる螢雪次朗さんです。
『ガメラ対宇宙怪獣バイラス』
ガメラ・シリーズ初の異星人侵略モノです。
結論から申しますと、ガメラで宇宙人モノは地雷です。地雷原と言っても差し支えありません。
有名な『ガメラ マーチ』が主題歌となり、前作以上に子供向け路線を明確にした作品です。
加えて、主人公の少年が増殖した作品でもあります。今作以降、主役は日本人とアメリカ人の子供コンビが担います(北米への販促事情なのだそうな)。ある意味、バディ物となったわけですね。
地球側の軍は申し訳程度に出てきますが、マジで斬られ役です。何の役にも立ちません。
また、侵略に来たバイラス星人も、けっこうな阿呆です。飛来した所にたまたま居合わせたボーイスカウトの少年二人を誘拐するのですが。そのまま地球に降伏勧告するわけです。「二人の子供を助けたければ全面降伏せよ」と。世界制覇を企み幼稚園の送迎バスをジャックしたショッカーすら真っ青になるレベルです。しかも、これに応えて国連は降伏するのですから……。いやまあ、連中の科学力でガメラが操られていたことも理由にあるけどね。
拉致された二人組は宇宙船の中であれこれ抵抗するわけですが、子供の悪戯程度で内部破壊工作が成立する侵略用宇宙船というのも……ねぇ?
とにかく二人の活躍でガメラは洗脳を解かれ、バイラス星人は最後の手段として自身を怪獣化して玉砕するワケ。ぶっちゃけ、頭が良いとは思えません。『ウルトラセブン』の星人たちに教えを請うたらいいと思う。
ただ、バイラスはガメラの腹を何度も突き刺しました。これは歴代敵怪獣の中では、かなりの貢献です。残虐すぎて観ていて気分の良いシーンではありませんけどね。
侵略モノなのに街の破壊シーンが過去フィルム以外に一切なかったのは、あるいは予算がなかったからなのかもしれませんね。なにせ十数分も過去フィルムを流してますから。好評でシリーズ化してるのに低予算って何それ? どこのブラック?
なお、この作品には劇場公開時の 72分版、北米向けに過去フィルムを増量した 90分版、国内向けに 90分版を再編集(大映倒産時に 72分版が紛失したため)した 81分版の三種類が存在し、このディスクに収録されてるのは 81分版です。
ちょいとした余談・その8。ボーイスカウトの中に後のZAT隊員・東光太郎さんがいます。
『ガメラ対大悪獣ギロン』
前作が興行的には大成功だったらしく、調子に乗って宇宙人モノを続けるという短絡思考。
結果、駄作が出来上がりましたとさ。
例によって主人公は日米の少年コンビ。この二人が、たまたま着陸していたUFOに無謀にも乗り込み、見事に拉致されます。行った先は、太陽を挟んだ正反対に位置する惑星テラ。常に反対の位置にいるので地球からは見えないんだとか。以上、すべて宇宙人のお姉さんの言なので、どこまで信用していいものやら。
テラは異常気象で怪獣が大増殖、ギロンを何とかコントロールして防衛しているそうで。
で、まあいろいろあって宇宙人の悪意に気づいた二人が内部破壊やら何やらやって、結果的に宇宙人側は自滅。助けに飛んできたガメラもギロンを倒して、二人を地球に連れ帰ってくれるという大団円。
なお、この間、地球の大人たちは何もせず、ただUFOが目撃されたとか怪電波が飛んでいるとかでオロオロしてるだけ。もちろん地上はまったく被害に遭わず、低予算のなせる技でございました。
そもそも、子供たちが空飛ぶ円盤を見たと言っても信用しないばかりか嘘つきと叱るだけ(前年にバイラス星人の事件が世界中を騒がせたのにねぇ)の母親たちが、ラストで「子供の言うことを信じないと」と反省したところで、あてつけがましくて、はっきり言って蛇足な演出でした。
こんな駄作のために劇中でガチの丸刈りにされた子役さんには同情を禁じ得ません。
ちょいとした余談・その9。元ゴチメンバーのお父上が二度目のご出演。
ちょいとした余談・その10。大村崑さんが巡査役でご出演。劇中でも「コンちゃん」と呼ばれてました。
『ガメラ対大魔獣ジャイガー』
ギャオス戦に次いで自衛隊が頑張ったと思います。
ジャイガーの弱点を探る過程で謎解きの要素もあり、なかなか楽しめる作品として、まとまっています。少年コンビも無謀が過ぎるものの、それなりに活躍しましたし。
主な舞台は開幕前の大阪万博会場。タイアップというわけではないそうですが、各パビリオンも紹介されていて楽しいです。
大阪……そう、大阪なんですよ。バルゴンのときに壊された大阪城が、またも壊されるんですよ。因果ですかねー(笑)。
ガメラはジャイガーに二度、負けました。しかも二度目の敗北からの復活には人類の手助けを要しました。自力復活は無理でした。つまり、シリーズ中で最強の敵はジャイガーだったと断言できます。敵が強い。これだけでも作品は魅力的になりますよね。ジャイガーの攻撃で人が白骨化するシーンが怖かったんだよー。
なお、今回の件でガメラの体はアオウミガメに似ていると判明しましたとさ。
ちょいとした余談・その11。大人側主人公の万博広報部員・沢田圭介を演じたのは炎三四郎という凄い芸名の新人さんでして。この人、大映倒産から芸名を変えに変えて迷走したのち最後に石森章太郎さんから「速水」の芸名を貰って「敬介」という役を貰い、現在に至ります。セターップ!
『ガメラ対深海怪獣ジグラ』
なんでまたやるかね、侵略モノを。
とは言え、ジグラ星人はバイラス星人とは違います。
なんせ地球に対する降伏勧告に際して、人質を四人も取ったんですから! バイラス星人の二倍ですよ、凄いでしょ♪
……変だな。ガメラ大好きなはずなのに、作品の欠陥しか見えてこない。(;^_^A
いや実際、やっつけすぎるんですよ内容が。母星の汚染を逃れて宇宙の彼方から生き延びるためにはるばるやってきたジグラ星人が、その侵略作戦を綿密に練っていないなんて、ありえないでしょ。それとも地球をナメてた? ぶっつけ本番で成功すると思ってた?
洗脳して部下にした地球人を地上に降ろして命じたことが、幼稚園児二人を始末しろって……ショッカーでも、もう少しマシな命令するよ。しかも、その幼稚園児に振り回されて任務失敗してるし。
たった一人の手下を失ったジグラはガメラに宇宙船を壊されて身一つ。やむなく自身を怪獣化して(と言うか水圧の関係で巨大化したそうな)ガメラと闘うことに……無計画にも程があります。
ついでに、幼稚園児二人が宇宙船から脱出して降り立った島にいた怪しい老人(吉田義夫さん、第一作目以来のご出演)がね。「頼朝公より賜ったこの島を先祖代々守っている」とか言っておきながら、それだけで出番が終わってしまう。いや、そこまで風呂敷広げたら何かあるやろ? それこそ頼朝公のときにも、この海にサメのバケモノが出たとか、頼朝公の指揮のもと撃退した伝説があるとか、いろいろとサー。でも、何もないんですよ。それがガメラの侵略モノでのデフォ。
ちなみに、今回の侵略でも地上の建物は壊れません。それでいいのか怪獣映画……。
こんな雑なストーリと演出を許してるから大映は倒産したんでねーの?
ちょいとした余談・その12。何もないので、ここに書きます。『対ギロン』以降の音楽担当は東映の特撮やアニメで有名な菊池俊輔さんです。
最後に、妖之佑的ランキングを記して〆とします。
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