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最初に申し上げておきます。
おたくのワンちゃんに、できものはありませんか?
もしもあるなら必ず一度、ヤブでない獣医師に診てもらってください。
できものに特に形状や部位は限定されません。様々なタイプのできものすべてを、まずは怪しんでください。
うちのワン子について、時系列に沿っての概要を書きます。
・2011年11月下旬
右後足の足首部分に腫れを発見。プヨプヨと水ぶくれのように柔らかい。
その日のうちに、かかりつけの動物病院へ。抗生剤の服用で一週間、様子を見ることに。
・2011年11月末
抗生剤による変化なし。よって感染症の類ではないと結論。
注射器で中の液体を取り出し検査。
・2011年12月頭
検査結果はシロ。
腫れ全体を切除する。一泊二日。切除した組織は念のため病理検査へ。
・2011年12月上旬
検査結果を受ける。
クロ。「肥満細胞腫」との診断。
早速に、治療設備のある病院を紹介される。
・2011年12月中旬
岐阜大学動物病院にて血液検査とエコー検査。幸い、この段階で危険度の高い臓器への転移は認められない。
治療開始。治療内容は放射線療法と化学療法(ともに七回予定)に加え、自宅での薬の服用。
・2012年1月下旬
手術跡の回復が思わしくないので治療中止。
傷が治るのを優先するため、かかりつけ病院に差し戻し。渡された傷薬を自宅で毎日塗布。
・2012年2月中旬
ほぼ傷跡が固まる。
一ヶ月近くぶりに岐阜大にて治療再開。
・2012年4月下旬
予定の治療回数を終了。
CTスキャンにて全身の検査。幸いに転移は認められず。
この前日、自宅にて背中と言うか腰の部分に小さいが新たな腫れものを発見。岐阜大の医師に相談すると、その場で切除、検査へ。
・2012年5月上旬
GW明けに岐阜大から連絡。
腰のできものは肉芽腫であり問題ないとのこと。
これにて、ひとまず岐阜大での治療は完了。
以降、かかりつけ病院にて、飲み薬を続ける。
これは、薬を一気にやめると、かえって危険なので、少しずつ減らしていくため。
・2012年6月中旬
腰、つまり以前できた肉芽腫とほとんど同じ場所に、同じようなできものを発見。
かかりつけ病院にて触診、サイズの計測をしたうえで様子を見ることに(肉芽腫は同じ場所にできることも、よくあるとのこと)。
・2012年7月上旬
腰のできものに変化は見られず。
減らし続けてきた飲み薬を終了。
これ以降に、できものが大きくなるようなら、薬で止まっていた可能性もあるため、あらためて精密検査ということに。
ということで、何事もないとしても当分の間は経過観察が続く。
うちのワン子がかかった病気は、書いたとおり「肥満細胞腫」という悪性のものです。「肥満細胞」という誰にでもある細胞が悪性化するものです。名称から勘違いする人もいるそうですが、太っているいないは関係ありません。
Web で調べたところ、七、八歳あたりの中年以降に発病することが多いそうです。
この病気は「詐欺師」とまで言われるほどに、見た目や触診では専門家でも判断できないそうです。確実に診断するには病理検査しかありません。
うちの子もそうだったように、まずは注射器で内容物を取り出して調べます。たいていは、ここで判別できるようですが、うちの子の場合もですが、これだけでは正体を明かさないこともあるという、「詐欺師」と言われるだけのことはあります。
具体的な治療に関しては専門医との相談で決めることになりますが、主な問題点は経済的なことと時間的なことになるでしょう。
まず経済面。
かかりつけの病院からの紹介による二次診療、しかも高度な医療ということで、基本的にどうしても高くついてしまうということがあります。
うちの子の例ですと、岐阜大では放射線にリニアックという新型機械を導入したこともあり、1セットの治療で40万円ほどかかります。従来機のオルソだと15万円ほどだそうです。オルソでも治療成果は充分期待できるそうですが、もちろん期待度のより高いリニアックをお願いしました。
これに加えての化学治療は抗ガン剤投与と自宅でのステロイド剤服用。これと毎回の血液検査とで一回おおよそ1万円ほど。
合計で一回の通院につき6万円ほどかかりました。これが七回予定なので42万円予定。この他に当日の血液検査の結果を受けて「今日は治療をやめておきましょう」という日もかなりあったこと、最終日のCTスキャンに2万円ほどなどなど、いろいろで最終的に60万円くらいかかりました。
また、かかりつけ病院での外科手術に8万円。その後の診察等々に毎回数千円ほど(ステロイド剤をやめてからは数百円ですが)。
ということで、病院や症状、部位にもよるでしょうが、百万円ほどの予算を見込んでおく必要はあるかもしれません。
これから犬を飼おうという人は、ペット向けの健康保険をお考えになるのも選択肢の一つだと思います。
次に時間面。
肥満細胞腫に効果的と言われる放射線治療を施せる動物病院が、日本国内に数えるほどしかないという事実があります。
つまり、ワンちゃんを連れて通院できるかどうかという問題。
我が家の場合、車で一時間強という本当に近くに岐阜大があったのは幸いでした。大学行きのバスもあるので小型犬なら公共交通機関を使っても行けそうですね。
実は、検査結果が出る前に、Web を調べていて肥満細胞腫の可能性を疑っていた私は、その時点で全国にどのくらい治療できる動物病院があるかも調べました。が、探しかたが悪かったのでしょう、岐阜大の名は挙がっていませんでした。
かかりつけの獣医さんが岐阜大を紹介してくださって助かりました。
なにせ、岐阜大の他だと、我が家から一番近いのが、なんと三重県伊賀にある南動物病院ですからね(ググれば見つかりますが、マスコミでもよく取り上げられるほどに有名な最新設備を完備した最強の個人経営動物病院です)。実績のある所ですが、とても通える距離ではありません(凄い飼い主さんですと、病院の近くに借家を確保したりなさるそうです)。
本当に岐阜大に動物病院があって良かったです。
いろいろと幸運が重なっているとは思いますが、覚悟していた抗ガン剤の副作用も、目に見えるほどのものはなくすみました。おかげで食欲減退がなく体力を継続できたのは治療にも良かったはずです。
副作用としては体重の減少と、それに伴ってか減退どころか食欲の増進がありました。減る分だけ余計に喰っていたので結果的には体重維持となりましたが(苦笑)。
あと、喉の渇きが極端でした。かなり水を飲みましたね。
体重、食欲、渇きとも、ステロイド剤の飲む量を減らすごとに治まってきています。
目には見えない部分ですが、岐阜大での毎回の血液検査で免疫力の低下が見られたそうです(これが極端な日は治療中止となった)。
それと、外科手術が先だったため、放射線と抗ガン剤のせいで傷の治りが遅かったということがあります。これによっても何度か治療中止の日がありました。最初の検査でクロと出ていれば、あるいは手術せずに放射線治療と化学治療を始めたかもしれません。切除せずに治った例も、かなりあるそうです。
このまま何事もなく、腰のできものも良性であればいいと思いますが。
肥満細胞腫は再発も多いそうですし、一度はかかった体質を考えても歳を取ればさらに発病の可能性は高まるので、いずれはまた……それは覚悟しておかなければならないと思っています。
この秋には九歳になるワン子です。
せめて「老犬」と言われるまでを楽しく過ごせることを願っている日々です。
先代犬は十歳で迎えた最期を苦しみぬいたものですから……。
最後に、うちのワン子がお世話になった施設について、あらためてご紹介します。
※ 岐阜大学応用生物科学部附属動物病院
そのものズバリ、腫瘍科があります。これだけでも心強いです。
初診に、かかりつけ獣医師の紹介・予約が必要。
診療は月〜金の午前中。受付は 09:00〜11:30 。
放射線治療の機械には、オルソと新型のリニアックがあり、予算に応じて選べます。
獣医師さんたちの対応は皆さん丁寧で親切です。大学附属ということで身構えていた私が滑稽でした(いや、人間相手の某大学附属病院で、かなり不快な思いをしてるのだよ)。
岐阜県道78号線沿いに進むと判りやすい大学の看板が出ています。動物病院の建物前に外来専用の駐車場もあるので通うのにたいへん便利です。大学の正面入り口を入って右折した所の守衛さんに訊けば、ちゃんと教えてくれます。
東海地区の飼い主さんでしたら、ここは候補になると思います。
※ 伊奴神社
おそらく全国でも珍しいのではないでしょうか。ワンちゃんが境内に入れて、拝殿に面することのできる※神社です。
基本的には、もちろん人向けの神社ですが、ワンちゃん向けの祈祷や御守りもたくさんあります。
所在は名古屋市西区。名古屋駅からですと地下鉄東山線の伏見駅で鶴舞線に乗り換え、鶴舞線の庄内通駅で降りて庄内用水路という細い用水路沿いに東へ歩くのが一番、判りやすいです(ワンちゃん同伴だと車になるでしょうが)。
※ ここに初めて参拝した当時、たしかにワンちゃん同伴の参拝客を見ました。最近でも2014年の初詣にて、複数のワンちゃん参拝客がありました。ですが、2014年7月現在、「境内へのペット同伴はご遠慮ねがう」旨の立て看板が設置されており、ワンちゃんの同伴参拝は不可のようです。
マナーの悪い参拝客が少なくなかったのかもしれませんね。残念です。
なお、我が家がお世話になっている、かかりつけの動物病院と獣医さんについては、あえてお名前を記しません。
さすがに、かかりつけは近所の人でないと意味ないですし、私の個人情報にも関わりますから。
おたくのワンちゃんに、できものは、ありませんか?
もしもあるのなら軽く考えないで念のために診察を受けるよう強くお勧めいたします。
そして常日頃から全身を触ってあげてください。
※ 不本意ながら、続編を記述いたしました。
(2020年5月)
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