法定相続情報証明制度


 
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 各種相続手続きには、法定相続人を確定するために戸籍の束を必要とする。
 
 というのが基本です。
 
 一通ならたいしたこともない戸籍謄本の発行手数料も、被相続人の出生から死亡まで連続した戸除籍謄本とか、法定相続人全員分の戸籍謄本となると、その総合計金額もバカになりません。
 しかも法務局だけでなく、各金融機関や年金事務所などなどでも必要です。
 これらを一気に片付けたいなら、戸籍を複数組用意することとなり、さらにお金がかかります。
 
 用意する戸籍を一組だけで済ませたいなら、手続き完了後に添付書類を返却してもらうこと前提で、順繰りに一ヶ所ずつ手続きしていくことになり、日数がかかります。
 法務局での相続登記に十日から二週間ほど、銀行での手続きで二週間から一ヶ月くらいを見込みます。その間、戸籍は先方に預けたまま(銀行にもよる)ですから、他での手続きはできません。止まります。
 
 これを解決してくれる制度が「法定相続情報証明制度」です。
 
 簡単に言いますと。
 相続手続きに必要な戸籍の束(法定相続人の住所も記入するなら住民票の束も)の代わりになる書類を申請者が作り、その内容に法務官がお墨付きを与えてくれる制度です。
 戸籍(と住民票)の情報を相続関係に限って圧縮した書類を法務官が「正しい」と証明したものが「法定相続情報一覧図」となります。
 これの写しを戸籍の束に代えて提出すれば、たいていの所はOKです。
 
 つまり、これまでなら、相続手続きごとに各金融機関や登記所でそれぞれいちいち戸籍の束を読み解いていた作業を、法務局での一回に限ってしまう制度とも言えます。
 法定相続情報一覧図の写しは法務官が内容を保証しているので、各手続きでの確認が省略できる、ということ。
 
 この一覧図、原本は法務局で五年間、保管されます。その間、何度でも何枚でも写しを発行してもらえます。
 しかも 2021年現在、この制度は利用に料金がかかりません。完全無料です。
 
 相続手続きの件数が多ければ多いほど、この証明制度は有益だと思います。
 逆に、一、二件ほどしか手続きしないなら、利用しなくてもいいとも思います。
 今回、私は何事も経験と、利用してみました。
 
 
 


 
 
 手続きできるのは被相続人の相続人か、資格を持った専門家(司法書士、弁護士など)だけです。
 
 利用するにあたって準備すべきものは、言うまでもなく、
 
※ 被相続人の出生から死亡までの連続した戸除籍謄本
 
※ 被相続人の住民票の除票
 
※ 法定相続人全員の戸籍謄本
 
※ 法定相続人全員の住民票(一覧図に住所を記載する場合)
 
 この四種類の書類です。
 住所の記載は任意ですが、不動産の相続登記には住所が必須なので、どうせ一覧図を作るなら住所も載せておくべきです。
 
 集めた戸籍や住民票の情報を一覧図に書き込みます。
 
 以下に、簡単な作例を載せておきます。
 世帯主が死去し、遺族は妻と二人の子。という設定です。
 HTML で書いてますので、コピペしても使い物にはなりません。
 あくまでも参考程度にご覧ください。
 
 
 

被相続人 A野B造 法定相続情報
 
 
  最後の住所 X県Y市Z町一丁目
        2番地の3       住所 X県Y市Z町一丁目
  最後の本籍 T府P市O町         2番地の3
        QW999番地     出生 昭和45年6月7日
  出生 昭和11年11月11日    (長男)
  死亡 令和3年2月1日     ┌─A野F松(申出人)
  (被相続人)          │
  A野B造            │
    ||             │
    ||─────────────│ 住所 G県H市I町魚猫
    ||             │    777番222号
  住所 X県Y市Z町一丁目    │ 出生 昭和44年4月4日
     2番地の3        │ (長女)
  出生 昭和12年12月12日  └─E橋D子
  (妻)
  A野C代
       以下余白
 
       ┌──────────────────┐
       │ 作成日:令和3年2月22日    │
       │ 作成者:住所 X県Y市Z町一丁目 │
       │        2番地の3     │
       │     氏名 A野F松     │
       └──────────────────┘
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


 
 
 書式に決まりはありませんが、一般的には、このような家系図っぽい形で書くようです。
 法定相続人が多い場合は、一覧表の形にすることもあるようです。
 とにかく、誰が読んでも明確に判るように書きます。
 
 相続放棄した人や相続欠格となった人も必ず相続情報一覧図に記入します
 一方、相続廃除された人は一覧図に記入しません。戸籍に相続廃除の事実が記載されるからです。
 
 作成者の捺印は認め印でOK。
 
 下側にある余白は、法務官が内容を証明するための部分です。
 きちんと空けておきましょう。
 
 A4サイズの白い無地の紙を縦にして使います。
 法務局で五年間保存されますので、コピー用紙などより少し厚めのほうが良いと思います。私は百均にある、ちょっと割高なPOP用紙を用いました。
 
 普通はワープロ・ソフトで作成しますが。
 明瞭に読めるなら手書きでも可とする旨が、法務局の公開書類にて明記されています。
 
 
 


 
 
 法務局に備え付けの申出書(法務局のサイトからダウンロードできる)に記入と捺印(認め印)します。
 この申出書に、作成した一覧図と集めた戸籍や住民票の束と、さらに申出人の身分証明書を添えて、法務局に提出します。
 提出できる法務局は、
 
 被相続人の本籍地
 被相続人の最後の住所
 被相続人名義の不動産の所在地
 申出人の住所
 
 この四ヶ所どれかを管轄する法務局や支局です。
 この中なら、どこでもOKです。ただし、受け取りは申請した所となります。
 
 申出人の身分証明書は、運転免許証のコピー、マイナンバーカードのコピー、住民票のどれかです。
 注意事項として、一覧図の情報源となった住民票を兼用できません。面倒でも別に用意します。
 コピーの場合は、「原本との相異がない」旨の記述と署名、認め印が必要です。
 
 申請、受け取りともに郵送でもできます。
 が、初めての手続きではミスもありえます。窓口でなら、書類の簡単なチェックもしてもらえますので、窓口で手続きするほうをお薦めします。
 
 窓口で受け取る際には、申出書に捺印した同じ認め印が必要です。持参するのを忘れないように。
 郵送で受け取るなら、切手を貼って宛先を記入した封筒の提出も、忘れないように。
 
 後日に追加で写しを何度でも何枚でも請求できますが。
 写しを再申請できるのは申出人のみです。他の相続人には、できません。
 
 なお、申出人と手続きする人とは意味が違います。
 申出人の名前が入った一覧図を、申出人に代わって窓口に提出するのは代理人であって、申出人ではありません。
 
 
 
 きちんとした説明や作例・雛形は、法務局や司法書士さんなどのサイトで、ご確認ください。