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ついでなので、夢魔について少し私見など。
いつからなんでしょう、サキュバスに仰々しい角と翼が付属するようになったのは? 悪魔の一種という解釈から、そういった外見が与えられたのでしょうが、そもそもサキュバスは悪魔なのでしょうか?
ご存知のとおり、就寝中の人を性的に襲う夢魔(淫魔)には二種類あります。男性を襲うサキュバスと女性を襲うインキュバスですね。獲物をその気にさせるため、サキュバスは美女の姿を、インキュバスは美男の姿を取りますが、そもそも連中には姿形などありません。獲物である人間にそう見せている、錯覚させているだけです。チョウチンアンコウの頭にある光り物や、釣り用の毛針などと変わりありません。
古い西洋画に描かれているサキュバスは、霧のようなものの中に辛うじて美女の顔らしきものが浮いている、そんな感じです。もちろん角も翼もありません。これはサキュバスに本来、身体というものがないことを表しているのではないかと思います。
おそらくサキュバスやインキュバスは人の淫靡な感情エネルギーを糧にしているのでしょう。感情を食べる魔物であれば、物質的には存在していない。映画『ゴーストバスターズ』(一作目)に出てきたのが、これにかなり近い描写です(レイの寝込みを襲った1シーンね)。
サキュバスは男の精を食べているのではないか? という説もありますが、これに対する反論材料として興味深い説があるのですよ。
淫魔は、まず男性のところに美女の姿で訪れ、その精を吸い取る。そして次に女性のところに美男の姿で現れ、先に得た精を女性の胎内に注ぎ入れる、というものです。つまりサキュバスとインキュバスは実は同一の存在とする説。この説に則れば、せっかく取った精を放出してしまうのですから、目的は精ではない。なので人間の感情を食べているという考えも成立するのです。まあ定番の説は、人間の精を借りて繁殖行動している、というものですが。
ともかく、サキュバスとインキュバスが同一であれ別個体であれ、一連の淫魔の行動には知性が感じられないのですよね。何か本能的なもの、あるいは自動的なものと言いますか。なので、こいつらは本能で動くだけの相当に低級な魔物なのではないかと思うのです。喰って繁殖するだけの単純生物みたいな存在なのではないかと。
サキュバスと交わった男性は腑抜け(日本的に言うなら腎虚)になり、インキュバスと交わった女性は懐妊しかも魔物を産む、とされています。ロクなもんじゃないのは、まちがいなく。淫魔の能力は獲物である人間を性的興奮に導くためだけに費やされる。一つの目的に特化したシンプルさ故、むしろ高性能で強力。こんなのに目をつけられたら、たまったもんじゃありませんね。桑原桑原。
以上、あくまでも私見でございました。