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『オーズ・電王・オールライダー レッツゴー仮面ライダー』を観てきました。
乱暴に言ってしまいますと、物語の構成は『クレヨンしんちゃん 雲黒斎の野望』の、あのパターンなんですよね。
ひょんなことで、過去に行って、ひと暴れ。
現代に戻ってみれば、歴史が改変されていた。
んでもって、もう一度、過去に戻って歴史を修正。
と、まあ。
デンライナーというタイムマシンがある以上、当然のストーリ展開なのですが。
それはそれとしても。
昭和への熱い想いが炸裂した作品。
でした。
メインで活躍するのは映司&アンク、幸太郎&イマジンたちです。
よって『電王』、『OOO』以外の平成ライダー好きには、おそらくはまったく楽しめない作品でした。そんな人たちには『ディケイド』のほうが好みに合うことでしょう。
ただ。
昭和ライダーのファン、特にダブルライダー好きには熱く燃えられる作品です。間違いなく。
というほどに、ダブルライダーとショッカーの闘いに重きを置いてくれています。
感じたのは、制作スタッフの昭和ライダーに対する想いが強いということ。
この想いは、例えば『V3』や『ストロンガー』あたりにダブルライダーを客演させた当時のスタッフよりも、ずっと強いと言えます。
とにかく大幹部や怪人たち、そして何より各ライダーの再現性が当時の客演時とは比較にならないほど正確ですからね。
ジェネラルシャドウやアポロガイスト、十面鬼など一部、当時の姿をリニューアルしてはいますが、それとて当時は充分にできなかったことを今回「改善」した、と納得できる修正です(て言うか、十面鬼とアポロガイストは『ディケイド』の流用でしょう)。
確か、『V3』(キバ一族編)客演時のダブルライダーは、すでに画像エフェクトと効果音にレギュラー時とは別物が使われていて、ひどく失望したことを覚えていますし。
『スカイライダー』客演時の各ライダーマシンは、鈴木自動車ではなく、当時のスポンサーであったポピー(現・バンダイ)がアトラクション・ショー用に作った、いわばパチモンでした。ライダーそれぞれのマスクも、どこか変でしたしね。TV画面からでも、そのいい加減さ、安物さが嫌でも見えましたよ。
比べると、今作品でのスーツやマシン、そしてSEの再現性は「素晴らしい!」と鴻上会長が叫びそうなほどに本当に素晴らしいです。違和感が全く無いんですから。
そして、スーツ・アクターさんたちも見事に演じてくれました。
“あのとき”のダブルライダーそのものが、スクリーンで闘っていると感じました。本当に。
余談になりますが、この現象はウルトラマンのシリーズにも共通しています。
『メビウス』客演の歴代ウルトラマンたちの再現性が、過去の、例えば『タロウ』や『レオ』客演時の歴代ウルトラマンたちのそれと比べて遙かに高かった事実があります。
と言いますか『タロウ』や『レオ』における客演が、あまりにも酷すぎたですよ。侮辱的と言ってもいいほどに……。
もちろん、再登場した怪獣・星人も同様です。『帰ってきた』登場のバルタンやゼットンなんて見るに耐えなかったですよねぇ。
やはりスタッフの思い入れの強さの差、ということでしょうか。
アフレコに可能な限りオリジナル・キャストを起用したことも大きいですね。
本郷ライダー、一文字ライダー、ライダーV3の三人と、そしてショッカー首領、ジェネラルシャドウ、大神官ダロム、ジャーク将軍と、豪華な声が揃ってますよ。
ささきいさおさんというビッグネームの出演も、これまた大きいですね。
え? 何でアニソン歌手&アニメ声優の人が『ライダー』に? って?
ささきさんは、かつての『仮面ライダー』にて、ゲルショッカーによってリストラされるショッカー科学者役として出演されたことがあるのですよ。
今回の役も、なかなかに憎いところを♪
劇場版『ディケイド』の二作品にあった大ショッカーおよびスーパーショッカーの存在は、今作品にてはスルーされています。あれは並行世界での物語ですしね。
今作品では、ショッカーを中心に各組織が結託する構図です(なんと、ミュージアムまで参加してた♪)。
さすがにクライシス帝国が世界制覇の同盟に参加するのは、個人的には疑問ではありますが。つか、実際、ジャーク将軍は会議で反対してましたし(笑)。
それでも、結束を求めるショッカーに対し、ゴッド、ゲドン、デルザー軍団が、それぞれの立場で意思表明をするなど、かつて『ストロンガー』最終回で、それまでの悪の組織すべてを一人の首領に集約してしまったあの乱暴さを東映自ら否定したのは快挙です。大いに評価できます。
平成ライダーで活躍しておられる脚本家・井上敏樹氏のお父上である伊上勝氏は偉大なライダー脚本家ではありますが、ライダー第一シリーズを総括する『ストロンガー』最終回のあの強引さだけは評価に値しませんでした。今となっては「やっぱり親子か」と言いたくなるほどにね(脚本家だけの責任でもないでしょうが)。
とにもかくにも、ダブルライダー、ショッカーを始めとする悪の組織、そして少年仮面ライダー隊と、昭和組の大活躍が光ります。
一方の平成組では、映司、アンクvsモモの字、幸太郎&テディだけでなく、オーナーが見せてくれましたね♪
スタッフに「脚本協力 小林靖子」とあるのは、そういう意味なのですね。
『電王』の最終回を観た人なら強く記憶しているであろう、あの名台詞に、燃えずにはいられません。
タイム・パラドクスの問題とか、いろいろ不備もなくはないのですが、それはいつもの許容範囲でしょう。
野暮だと判ってはいますが。
こだわりたいからこそ、言わずにおれない苦言も。
終盤に全ライダーが結集するのは、いいとしても。
いわゆる「悪のライダー」まで協力してくれるってのは、どうよ?
わざとブレた画像にしてましたが、悪徳刑事のガイがいたことは確認できました。おそらく王蛇とかもいたことでしょう。
そして。
オーナーが連れてきた助っ人たちもねぇ……あれは、さすがにやりすぎです。シラケました。
『W』の二人組客演も、ちょっとムリクリ挿入した感があり、残念ながら流れを阻害しています。
二人が本編のストーリに一切関わっていないだけにね。
スタッフ・ロールのバックには『レッツゴー!!ライダーキック』を映画用にアレンジした『Let's Go RiderKick 2011』が流れるのですが。
これがまた……。
ひ ど す ぎ る !
いえ、アレンジそのものに文句は申しません。
ただ、ヴォーカルだけは、しっかり選んでほしかった。
CMにも流れてますから、お判りでしょう。あんな、か細い線のギャル声で闘いの歌を歌ってもらっては困ります。
誤解しないでいただきたいのですが、女性ボーカルでもいいのですよ。例えば『オーズ』主題歌の大黒摩季さんみたく一本芯の通った声ならね。
なのに何ですか、あの「仮面ライダーGIRLS」って。闘うどころか、戦闘員の顔を見ただけで、しゃがんで泣き出すに決まってます。
コスチュームからも、CDを売るために最も安直な方法を選んだのが見え見えです。つまり、可愛い(?)ギャルを起用すればヲタクが買うだろう、と。
なめるなっ!
石ノ森章太郎さん作詞の、あの名曲を貶めたその罪、責任者は万死に値します!!
百歩譲って、あれがイメージ・ソングとしての扱いなら妥協もしますがね。映画のエンディング曲とするのは断じて許せません! 責任者、出てこいっ!!
またも余談ですが。
東映は曲については、ポカが続きますね。
『ワンピース』の主題歌を島田紳助(あえて呼び捨て)とヘキサゴン・ファミリーに任せたことと言い。
『ドラゴンボール改』の後期エンディング曲を秋元康氏とAKB48に任せたことと言い。
どちらもファンから厳しく叩かれてるじゃありませんか。
『改』ではBGMにて盗作問題も発覚してますし。
閑話休題。
主題歌の担当者だけが足を引っ張った感じがして、それがしかも余韻を味わうべきエンディング曲なだけに、実に残念でした。
でも、総括して、かなり見応えのある作品でした。
良い映画だったと思います。
面白かったですからね。
にしても、迫力満点のキングダークは、もったいなかったですねぇ。
ぜひとも、おおいに暴れていただきたかった……。
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庭に出る
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