★
道草に戻る
日記での地デジの話ついでに。
2011年7月のアナログ停波で、日本国民は嫌でも地デジに移行させられるわけですが。
それ以前に地デジを導入しようとお考えのかたに、少しでも参考になればと思い。
まずは。
地デジを悪用した詐欺・悪徳商法が横行していることは、認識なさっておくべきです。
総務省のアナログ停波宣言を逆手に取り、「今のうちにアンテナの工事をしないとテレビが観られなくなる」とお客を不安にさせ、実は不要な工事を施工する悪徳業者のことが、ニュースや記事で見受けられます。中にはお金を取るだけでトンズラする本当の詐欺もあるそうです。
悪徳とまでは言いませんが。妖之佑ンちにも、「早く工事をしないと地デジに間に合わなくなる」と不安を煽るCATV業者の勧誘がありました。パススルーで地デジが観られるということですが、実際の内容は多チャンネル・番組満載なCATVへの入会を促すものでした。当然、無視です。
「アンテナの工事をしないとテレビが観られなくなる」というのは、正しくもあり間違いでもあります。はっきり言えば、地域や環境によって違う。
どういうことかと申しますと。
まず前提として、地デジはUHF電波で送信される、ということを憶えておきましょう。
ちなみに、アナログ地上波テレビ放送にはVHF(1〜12チャンネル)とUHF(13〜62チャンネル)とがあります。これは周波数帯域の区分けなんですが、細かいことは知らなくてもいいです。ただ、VHFが1〜12チャンネルで、UHFは13〜62チャンネルであり、周波数帯域が違うためVHFとUHFとで、それぞれ専用のアンテナが必要だということが重要事項。
で、地デジはUHFの電波だということ。すなわち、UHF用アンテナ(主に、魚の中骨みたいな細いヤツ)でのみ地デジは受信できる。VHF用アンテナ(主に、漫画などの背景に描かれる典型的な「テレビのアンテナ」)ではダメ。
これが大前提。
で、事情の比較的簡単な地方から。
地方ではUHF放送は、独立U局や難視聴地域(山間部などなど)向けを含めて古くから行われてきました。ですので、地方在住者はUHFに馴染みが深いはずです。
地デジは、このUHFの電波で送信されているので、今までのUHF用アンテナで受信できます。
「地デジ推奨アンテナ」なんて謳い文句が誤解を招きますが、テレビ受像器と違い、別に「地デジ」と銘打ってない従来のアンテナであっても、UHF用であれば地デジの電波をキャッチできます。この意味では「観られなくなる」という悪徳業者の言い分は嘘です。
ただし、問題が一つ。
地域によっては、地アナと地デジで送信所の場所が異なっている場合があるのです。
UHF用の八木式アンテナ(いわゆる「魚の骨」)は指向性を持つので、送信所の方向に向ける必要があります。したがって、アナログとデジタルで送信所の方向が違うなら、これまで使っていたアンテナを地デジ狙いに再調整するか、もしくはアンテナの追加が必要となります。この部分では、悪徳業者の言い分は正しいことになる。
次に首都圏。
首都圏の地上アナログはVHF、つまり1〜12チャンネルだけで主要キー局を網羅しているため、地デジに移行するには、UHF用のアンテナが新たに必要です。その意味では、悪徳業者の「観られなくなる」という台詞も嘘ではない。
と言うか、ずっと首都圏にのみお住まいのかたですと、都内でテレ玉の深夜アニメを観るようなかた以外は「VHF? UHF? 何それ?」ってレベルが普通だと思います。考える必要がなかったはずですから。
ともかく、首都圏では地デジ用に新たにアンテナを建てる必要があるケースのほうが、多数派でしょうね。
さて、以上を踏まえまして。
地デジに移行するにもアンテナに関してのみは、全国規模で言えば、実はそのままで行けるご家庭がかなりの数あるものと思われます。
ただし、それぞれの地域で事情が異なりますから、送信所の位置くらいはご自身でお調べになることをオススメします。工事不要なのに、まだまだ使えるのに、わざわざ新しいアンテナに替えるなんてのは、もったいないですからね。
そうでなくても。まずは地デジTVを買って、つないでみて。で、地デジが映らなかったら、それからアンテナのことを考えても遅くはないと思います。今の機種ならアナログも受信できるものが大半ですので、とりあえずアナログでしのぐことができますからね。
業者からのアプローチでアンテナ工事を急かされても、慌てないことです。アナログ停波まで、まだ三年以上もあるんですから。
さて。
ともかく、地デジ用アンテナを建てることにしたとしまして。
どんなアンテナが良いのか。業者任せでなければ、迷うものです。
まずは、「Dpa 社団法人 デジタル放送推進協会」のサイトで放送エリアを確認しましょう。
http://vip.mapion.co.jp/custom/DPA/
これでエリア内ならば、地デジが観られるという目安になります。
そう。あくまでもこれは「目安」にすぎません。
うろ覚えで申し訳ないのですが。この放送エリアには、送信所の方向が開けた土地で、地上10メートルの高さ(二階建て家屋の屋根上相当?)に、14素子(「素子」というのは、アンテナの軸に複数渡された細い棒状パーツのこと。これの数が多いほど利得が高い、つまり高性能)のUHFアンテナを建てた環境、という前提が(こっそり)あります。
つまり、送信所方向にでっかいビルが乱立してて、自分チは平屋建ての借家で、おまけにアンテナは大家が安物しか建てさせてくんない、という環境では、いくらエリア内でも受信は無理だったりします。
歪みまくりでも内容を鑑賞できるアナログとは違い、デジタルには○か×かの二択しかありませんからね(音飛びレコードと音飛びCDの違いからも判る)。地デジも綺麗に観えるか、まったく映らないかの二つの道しかないわけ。
で、めでたくエリア内で、しかも悪環境無しなら、アンテナは14素子でOKということになります。
が、個人的には、保険の意味も込めて一クラス上のアンテナをオススメしたいですね。環境なんて、いつ変わるか判りません。ある日気づいたら、送信所方向にでっかいマンションの建築が始まってた、なんてこともありえますから。
14素子でいいところを20素子とかね。ここで、これまた個人的にはですが、14素子のところを20素子にするくらいなら、14素子のパラスタックがオススメです。多少高価になりますが、全長が14素子のまま性能が20素子を上回りますので。
また、東名阪地域限定になりますが(この地域の地デジはチャンネルの振り分けがUHF低域に限られているため)、UHFのロー・チャンネル専用に調整されたUHFアンテナもあり、これはUHFオール・チャンネル対応品にくらべて低域での性能が高いそうです(14素子で20素子相当)。しかもサイズ・重量とも変わらないので、この東名阪仕様にするという選択肢も充分にアリです。
さらには、上記二つを兼ねた、パラスタック方式の東名阪仕様というのもあり、ほぼこれが最強。
送信所の近場、強電界域なら14素子すら不要の場合も多いと聞きます(無論、環境によります。例え都心であっても、ビルの谷間なら話は別)。
これについては、簡単に調べる方法があります。
アンテナからの引き込みに使う同軸ケーブルを少し加工して作る簡易アンテナで、電波の状況を確認するのです。これで、どのくらいの強さの地デジ電波が届いているかを受像器で調べて、それから購入するアンテナの機種を選べば失敗がないですし、無駄がありません。
簡易アンテナの自作方法は「スリーブアンテナ 地デジ」のキーワードで検索してみてください。世界が滅ぶほどに不器用な人以外なら、簡単に作れます。
環境によっては、この自作アンテナだけでバッチリというケースも多いようです。これで充分なら、テレビの台数分、同軸ケーブルを加工すればいいだけですから超安上がりで幸せになれます。あとは室内の見てくれだけですね。お客を呼ぶ場合、ちょっと見苦しいかも……(笑)。
そして、残念ながらエリア外だった場合は……エリア拡大を待つか。あるいは遠距離受信に挑むか。といったあたりになりますね。
まあ、無理に大金かけて遠距離用大型アンテナを建てるよりは、ギリギリまでアナログで行かれるのが、よろしいかと思います。総務省の方針では、全世帯が地デジを観られるようにするそうですから、いちおう(でなけりゃ、アナログ一斉停波なんて暴挙を宣言できますまいて)。
大雑把に言って――
※ 自作アンテナを室内で充分なら、室内用(見た目を気にしないなら自作をそのまま使うべし)。
※ 自作アンテナを窓から出して充分なら、ベランダ設置用の小型アンテナ。
※ 自作アンテナを窓から出して少し足りないなら、ベランダに14素子、あるいはそれ相当の性能を持つ地デジ専用アンテナ(デザインがお洒落。ただし無指向性のためアナログには不向き)。
※ それ以外は、屋根に建てよう。
※ で、屋根に建てる場合は、先々のことも考えて一クラス、できれば二クラス上のアンテナにしておくのが吉(室内やベランダ設置と違い、簡単に建て替えられないから)。
――といったところかと。
なお、ブースターという選択肢ももちろんありますが、これはやはりアンテナだけではどうしてもという場合にのみ使う最後の手段だと、個人的には考えています。
つまり、
「20素子は嵩張るし、そもそも屋根に“魚の骨”を建てるとみっともないから、お洒落なデザインの室内用やベランダ用にブースターを組み合わせて」
という考えかたは理屈が破綻していると言っていい。ここはやはり20素子を建てるのが基本だと思います。それでもどうしても足りない場合にのみブースターを、という流れですね(さすがに30素子は大がかりすぎます)。
例えるなら、軽自動車に強いターボを効かせるより、ターボ無しの普通車のほうが安定した高馬力を得られるようなものです(かえって判り辛い?)。
もちろん、住宅事情等々で屋根に付けられない場合は、そもそも問題が別です。
それと、今までのアナログ受信のUHFアンテナをそのまま使おうとしたら少しばかり利得が足りない、という場合にはブースターを追加するほうが安上がりになるでしょうね。つまり、ケース・バイ・ケースということ。
先にも申しましたが一クラス上をという場合に、パラスタック方式のアンテナはオススメです。アンテナの全長は変わらないままに、素子数を増やしたのと同様の効果がありますので(と言うか、実際には素子数は増えている。ただし全長が変わらないので嵩張らない)。
14素子の全長で20素子以上の利得が得られるだけに、お金を払う価値は充分にあると思います。見た目の「ムカデ」ささえ気にならないなら……ですが(笑)。
共同住宅の場合はアンテナも共同アンテナとなりますから、また話が変わってくるでしょうね。
送信所の方向がアナログとデジタルで一致しているとか、入っているCATVがパススルーとかならともかく。
そうでないならアナログが本当に停波するまでは、大家や管理会社の尻が重たいせいで地デジの視聴は絶望的となるかもしれません。ここは住民側の交渉次第でしょうか。規約などでベランダ設置が禁止されていないなら、サッサと自分で取り付けてしまうのがいいかもしれませんね。
そして。
上記のこと、すべてに言えますが。
長くつきあいのある電器屋さんとかがあるなら、全部お任せでいいと思います。たぶん、それが一番安全で安上がりに、しかも納得できる結果を得られます。
あるいは、首都圏など今まで一度もUHFを受信したことがない場合は、地デジ対応テレビを買うついでに電気店にアンテナ設置も依頼するのが簡単でしょう。まっとうなお店なら、下手なことは、しないでしょうから。
が。今回限りの業者さんなら、そしてアンテナだけの工事なら、向こうの言いなりは基本的には微妙に(業者によっては、かなり)損をするのが通例です。お金は大事に遣いましょう。まあ、湯水のごとくに大金を支払っても痛くも痒くもない人は、別ですけれどね。
まとめますと。
地デジはUHF電波なので、従来のアナログ放送向けUHFアンテナで受信可。
まずは、今のアンテナのままで地デジを観られるかどうかを確認。
新たに建てるなら、アンテナには良い品を。
必要とされるものより一クラス、できれば二クラス上のアンテナを。
ブースターは最後の手段(ただし、住宅事情により優先順位は変動)。
アンテナは、より高い所に建てたほうがいい(ただし、物事には限度がある)。
アンテナの素子数は多いほうがいい(もちろん、物事には限度がある)。
引き込みケーブルは太くて短いほうがいい(地上高と矛盾するが)。
室内アンテナは、電波強度に余裕のある環境でのみ有効。
実際には、室内アンテナで充分なら、自作簡易アンテナでも充分。
業者のいいなりは損(含:CATVの勧誘)。
とりわけ、飛び込み訪問の業者には要注意(含:CATVの勧誘)。
ある程度は自分で調べて考えよう。
こんなトコでしょうか。
最後に、主要アンテナ・メーカーさんへのリンクを。
DXアンテナ
日本アンテナ
マスプロ電工
ミニー
八木アンテナ
なお、妖之佑が個人的にオススメするアンテナ機種ももちろんありますが、ここで具体的製品名を記すことは、あえてしません。
こっそりとなら、いくらでもお話しできますが、僻地とは言えWeb上では偏った物言いは避けておきたいですからね。
★
庭に出る
|