日頃から備えておくべき事柄


 
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 備えあれば何とやら。
 前もってできることは、前もってやっておくほうが労力もかからない。
 と思われる案件について書いてみました。
 
 
 


 
 
1.重要な事物の確認(家族の誰か、特に世帯主が亡くなってから探すとなると、バタバタして困る系のヤツ)
 
(1) 公的
 
 個人番号カード(マイナンバーカード)、
 年金手帳(見つからない場合に備えて、ねんきん定期便も)、
 各種年金証書、
 運転免許証または運転経歴証明書、
 健康保険証または後期高齢者医療保険証、
 住民基本台帳カード、
 印鑑登録証および実印、
 自宅など固定資産の登記済証もしくは登記識別情報(俗に言う権利書)、
 自家用車の車検証(まさかとは思うが、阿呆だと車内に置いてないかもしれんから念のため確認すべし)、
 旅券(パスポート)、
 障害者手帳
 ……等々
 
(2) 民間
 
 電気ガス水道電話NHKプロバイダ等々の書類、
 銀行の預貯金通帳とキャッシュカードおよび届出印、
 生命保険証書、
 火災保険証書、
 自動車保険証書、
 証券、
 各種会員証、
 有料ネット会員入会の有無(できればアカウントとパスワード)、
 葬儀屋の会員証や契約書、
 墓地や納骨堂の契約書・使用許可証
 ……等々
 ※ これらがすぐに見つからない場合でも、月々の口座引き落としの通知ハガキや検針票や請求書や会報などがあれば口座番号や会員番号が判るので、最新のヤツだけは常に残しておくべし。
 
(3) 財産
 
 タンス預金、宝石貴金属類、美術品、古美術品……等々
 
(4) 負債
 
 ローンなど借金の有無や誰かの保証人になっていないかどうか
 ※ 負債とは違うが、完済しているのに登記上は自宅が抵当に入ったままというケースも、ありうる話。これは登記所で確認できる(登記事項証明書)ので、念のためにも一度は調べておくべし。
 
 
 
2.本人の意志(遺志)に関する事柄
 
 遺言書、終活ノート、あるいは家族間での話し合いを記録したもの
 ※ 遺産の分配に関することだけでなく
   葬儀埋葬の希望とか
   万が一のときに知らせるべき人たちの名簿とか
   絶対に知らせてはならぬ連中のブラックリストとか
   処分せずに残してほしいアイテムとか
   逆に「積み荷を燃やして」とか
  「私が死んだらPCは水に沈めて」とか
   とかとかとか
 
 
 
3.宗教的な事柄
 
(1) 本人の希望
 
 弔いについて(葬儀の宗教宗派、埋葬の方法、派手か地味か、などなど)
 すでに葬儀屋さんやお寺や霊園や納骨堂などと契約済みなら、その連絡先と書類の確認
 あるいは逆に「絶対に無宗教で」とか
 
(2) 家としての信仰の有無
 
 例えば佛教で言うなら、実家が檀家になっているなら、とにかく菩提寺を最優先にしないと後々に話がこじれます。
 親族の繋がりが強いなら、本家の宗派も無視できないかも。
 
(3) 弔いに関して
 
 弔いの段取りについて皆が元気なうちに葬儀屋さんの選択ともども具体的内容まで決めておくほうが、いざというとき楽。
 急なことになると、葬儀屋さんのペースで契約が進んでしまうものです。結果、オプションてんこ盛りの(不本意な)葬儀になるケースも。
 なので、早めに葬儀内容を具体的に決めた契約を葬儀屋さんと交わしておくと、きっと遺族が助かります。余計な出費も抑えられるし。
 
(4) 佛壇とか墓とか
 
 葬祭費同様、佛壇や墓にも相続税がかからないので、どうせ持つのなら世帯主が元気なうちに買っておくほうがお得です。
 ※ 葬祭費と違って、佛壇の購入費や墓地墓石の契約代金は相続税から控除されないので要注意。相続税がかからないのは、あくまでも佛壇や墓そのものを受け継いだ場合のみ。「これで私の墓と佛壇を買ってくれ」と遺されたお金で死後に墓や佛壇を買っても相続税の対象になる、ということ。
 無論、買わない持たない、という選択肢もあります。
 
 
 
4.手続きのため、いずれ必ず必要となるもの
 
(1) 本人確認書類
 
 遺族がやる手続きあれこれにおいて、顔写真付き(免許証、マイナンバーカードなど)は、それ一つで本人確認が済みます。
 顔写真が無いもの(健康保険証、年金手帳など)だと二種類の提示を求められるうえに、手続きによっては行程が煩雑になります。
 なら、写真付きの何かを取っておくほうが、いざというとき楽でしょ。
 
(2) 印鑑登録
 
 相続手続きに実印が必要なので、あらかじめ家族全員が済ませておくと吉。
 ※ 世帯主なら登録してるし、自家用車(軽自動車は除く)を持ってる人も登録してるはず。
 
 
 
5.特殊な案件
 
 特別な許可を受けているかどうかの情報も家族間で共有しておかないと、本人の死亡後に面倒なことになるかもしれません。
 例えば、銃や薬品類の所持許可と保管場所など。
 
 
 
6.やっておいたほうがいいかもな事柄
 
(1) 家族間で互いに同じ銀行の口座を開設しておく
 
 預貯金の相続は基本「解約して全額を代表相続人の口座へ送金」となります。であれば、同じ銀行同士だと送金手数料が無料となって、お得。
 また、ゆうちょ銀行は相続手続きにて他銀行への送金をしてくれませんので、故人の貯金を相続する場合、ゆうちょ口座を持っていないと現金で受け取ることになってしまい大変にリスキー。
 定期預金だけは名義変更ができるようですが、普通預金の相続とで通帳が複数になることを考えると、けっきょく面倒だと思いますね。
 
(2) 家族全員の戸籍を確認しておく
 
 いざとなって戸籍謄本を取り寄せる際、本籍地(住所や出生地とはまったくの別もの)を知らない、あるいは忘れちまうと苦労することに。
 なら、みんなが元気なうちに一度は取り寄せて保管しておくか、何かの用事で提出する前にコピーしておくべし。その記述を元に、いざってときに新たに取り寄せたらよろしいかと。
 まあ、「本籍地記載」の住民票を取れば現在の本籍地だけは判りますけどね。
 
(3) 親や爺様婆様の出生からの戸籍を確認しておく
 
 隠し子がいたり、あるいは別れたはずの相手の籍が残ったまま(『明石家サンタ』の不幸話にあったよな〜)だと、相続でガチ面倒になるので、あらかじめ知っておくと対策にも余裕ができる……かもしれん。
 家族を疑うようで気がひけますが(汗)。
 
(4) 本籍地を無闇に変えない
 
「やっておいたほうが」ではなく「やらないでおいたほうが」ですが。
 日常での手続きですと、戸籍が必要となる場合でも最新のものだけですみます。結婚前の戸籍などは要らないケースがほとんどでしょう。
 そのためか、遠方から取り寄せる手間を嫌って戸籍を現住所に移す人もいると聞きます。
 逆に、日本国内の住所表記であれば、そこに住んでいなくても本籍を移せます。
 それを受けてでしょう、阿呆なTV番組で「本籍地は好きな住所にできる」と、例えば皇居の住所や甲子園の住所、あるいは思い出の観光地の住所などを、オシャレだとばかりに無責任に薦めていたりします。
 が、人は必ず死にますから、死亡に伴う相続手続きも、いつか必ず必要となります。そのとき、本籍地をあちこちに移していると、すべての戸籍を揃える手間が、とんでもないことになりかねません。遺族に大迷惑をかけることとなります。
 遠方でも郵送で簡単に取り寄せられるのですから、戸籍の移動は婚姻など必要最低限に留めておくほうが、よろしいと思います。
 まして、遊びであちこち変えるなんて、馬鹿以外の何者でもありませんね。役所の書類は玩具じゃねーっての。
 
 
 
7.意外な盲点
 
 自分も含めて、家族全員の正確で厳格な名前表記を確認しておくこと。これ重要です。
 例えば、「広」なのか「廣」なのか、「真」なのか「眞」なのか、「桜」なのか「櫻」なのか、「将」なのか「將」なのか、とかとかね。
 本人が自分の名前の漢字をまちがえて憶えてる、なんてこともあるのですよ。
 
 通常なら、暇なときにでも住民票を取っておけば、それでOK。その表記で各種手続きは通ります。
 なお、運転免許証はダメです。まちがっていることが、わりとあります。つか、オイラはかつて更新のときに、やられたよ。orz
 
 しかしながら、住民票どころか戸籍謄本でも確認できない場合があります。
 どういうことかと言いますと、名前に使われている旧字体や異字体の一部は戸籍の電算化に伴う整理を受けて現在は「正字」で代用されている、ということ。
 つまり戸籍が手書きの時代に生まれた人ですと、その名前が今の電算戸籍で扱わない漢字という場合もあるわけです。手書き書類の電算化による捻れ、歪みですね。
 こうなると、改製原戸籍(電算化される前の手書きの戸籍)の謄本を取る以外に確認方法はありません。
 
 代用の正字でなくガチガチ正確な文字を記名に求められるケースとしては。
 
 まずは、年金に関する手続きですね。
 役所でも法務局でも通った正字が、なぜか年金事務所ではNGでした。
 けっきょく、手書きの戸籍に書かれてある古い字体を確認したうえで、まずは異字体から正字への「名前の変更手続き」をしなくてはなりませんでした。
 
 次に、時系列が前後しますが。
 喪主を決める際に、喪主名が正確な字かどうかを葬儀屋さんから訊かれました。
 ということは、もしも故人の名前に旧字体か異字体の可能性がある場合も、きっちり確認してくるのでしょうね。
 急なときに尋ねられても狼狽えてしまいますので、日頃からの備えは大切だと実感しました。
 
 そして、これはまったく別のタイミングですが。
 実印用の印鑑を作る際に、判子屋さんに確認を求められました。
 やはりプロですね。葬儀屋さん同様、どの漢字に旧字体や異字体があるか熟知しておられるのでしょう、ほぼ反射的に質問してきましたよ。
 
 というわけで、自分や家族の正確な名前が旧字体や異字体でないかどうか、予め確認しておきましょう。
 
 
 名前のついでに。
 実は住所表記でも、この問題は起こりえます。
 例えばですが。
「辻」というのは、今のPCで変換すると、ご覧のとおり二点の“しんにょう”ですね。
 ところが住民票などで一点の“しんにょう”の「辻」が、けっこうあるのです。
 つか、元々は「つじ」の漢字なんて一点“しんにょう”だったと思います、手書きでも。
 それが、いつの間にか二点しか出てこなくなってしまった(IMEパッドだと外字扱いで呼び出せる。ATOK はダメだった)。
 なのに、依然として一点“しんにょう”の「辻」が役所の公式書類に記載されている。
 この違いに気づかずに書類を書くと、たぶんですが登記所とかでNG出ます。
 もちろん、この問題は「辻」に限りません。とにかく住所の文字も名前同様に、あらかじめ厳格に正確に認識しておきましょう。