鬼太郎作品のおおまかな区分け


 
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『鬼太郎』作品には、いくつかの時系列、世界線があると思います。
 判りやすい例で言えば、貸本版で罪のない人すらも殺した鬼太郎が少年誌で正義の味方ヅラするのはどう考えても変だろ、ということです。
 よって、作者のお考えはともかく、一つの歴史としてまとめるのは難しいと個人的には思います。
 
 ここでは、鬼太郎の辿る複数の世界線について簡単にまとめてみます。
 
 
 


 
 
※ ルート1
 
 鬼太郎が恩ある水木家に仇で返す世界線。
 ここでは水木宅を鬼太郎父子が乗っ取ってしまう。
 まさに、真っ黒な鬼太郎。
 
『幽霊一家』(全2話)妖奇伝
『墓場鬼太郎夜話』(全3話)兎月書房
『鬼太郎夜話』(全4話)三洋社
『墓場鬼太郎』(全2話)兎月書房
 
 
 
※ ルート1’
 
 兎月書房版と三洋社版のリメイクのため、ルート1とほぼ同じ。
 水木の母親のその後が不明だが、貸本版と同様、ねこやでの水木と鬼太郎たちとの同居があるので、母親が無事であるはずがない。
 よって、黒い鬼太郎と言ってよし。
 貸本版とで進展の詳細や配役に違いがある。
 
「鬼太郎の誕生」(読み切り)月刊ガロ
『鬼太郎夜話』(全22回)月刊ガロ
 
 
 
※ ルート2
 
 ルート1に近いが、水木家が不幸にならない世界線。
 鬼太郎が水木家に疎まれたり追い出された描写も一切ない。
 鬼太郎が七歳になると目玉親父からチャンチャンコを譲り受け、そのときにねずみ男と出会い、ソッコーでコンビを組んだ。その時点で水木宅を出て行ったと思われる。
 事件はルート1とまったく違うが、鬼太郎の誕生からを描いているので、出版社を移籍したため仕切り直ししたのかもしれない。
 このルートでのみ、誕生したての鬼太郎には両目があった。
 ルート1の真っ黒さに比べると、わりとマイルド。グレーの鬼太郎と言える。
 
『墓場鬼太郎』(全3話)佐藤プロダクション
『墓場鬼太郎』(読み切り)東考社
 
 
 
※ ルート3
 
「特別編」として少年マガジンに掲載された、同じく少年マガジンの連載版とは別の世界線。
 月刊ガロからの抜粋改稿ではあるものの、結末が違っていたりするので、ガロ版とも違う世界線。鬼太郎も黒とまでは言えない。
 だが、鬼太郎父子だけで住んでいた家は住所が「調布市下石原」だったり建物の外見も同じと明らかに水木宅なので、描かれていない間に水木母子を始末したのかもしれない。
 黒い疑惑が消せない鬼太郎。
 
「鬼太郎の誕生(幽霊一家)」(読み切り)別冊少年マガジン
「牛鬼対吸血鬼(おどろおどろ対吸血鬼)」(読み切り)別冊少年マガジン
「ねこ屋のきょうだい」(読み切り)別冊少年マガジン
 
 
 
※ ルート4
 
 世間が最もよく知る世界線。
 基本的には正義の味方の白い鬼太郎(たまーに灰色が混じる♪)。
 
『墓場の鬼太郎』(全18話)週刊少年マガジン、別冊少年マガジン
『ゲゲゲの鬼太郎』(全49話)週刊少年マガジン、別冊少年マガジン
『鬼太郎のベトナム戦記』(全6話)月刊宝石
 
 この後、ルート4は二つに分岐すると思われる。
 
 
 
※ ルート4a
 
 数多の闘いに疲れた鬼太郎が南の島に移住して楽隠居の世界線。
 
「その後のまんがスター2 ゲゲゲの鬼太郎」(読み切り)別冊少年マガジン
『ゲゲゲの鬼太郎 死神大戦記』(描き下ろし)学研
 
 
 
※ ルート4b
 
 鬼太郎が隠居しない世界線。
 
『ゲゲゲの鬼太郎』(全13話)週刊少年サンデー
『鬼太郎とねずみ男』(全3話)いんなあとりっぷ
『鬼太郎の世界お化け旅行』(全16話)少年アクション
「妖怪ロッキード」(読み切り)プレイコミック
「三味線猫のなげき」(読み切り)GRAPHICATION
「蓮華王国」(読み切り)小説マガジン
 
 さらに、このルート4bが二つに分岐する。
 
 
 
※ ルート4b1
 
 鬼太郎が成長する世界線。
 鬼太郎の身長が伸びているとか、猫娘が大人びているなど、掲載が青年誌ということもあってか物語内での年月の経過を感じさせる。
 
『ゲゲゲの鬼太郎 挑戦シリーズ!』(全10回)週刊漫画サンデー
『続ゲゲゲの鬼太郎』(全23話)週刊実話
『新ゲゲゲの鬼太郎 スポーツ狂時代』(全23回)週刊実話
『新ゲゲゲの鬼太郎』(全23回)週刊実話
『大ボラ鬼太郎』(全5話)DON DON
 
 
 
※ ルート4b2
 
 鬼太郎が成長しない謂わば“永遠のショタ”世界線。
 ゲゲゲハウスが復活。猫娘も、かつての少年マガジンに登場したままの姿。
 と言うか、どちらもアニメからの“逆輸入”が実情と思われる。
 
「海坊主先生」(読み切り)週刊少年マガジン
『雪姫ちゃんとゲゲゲの鬼太郎』(全11話)月刊少年ポピー
「鬼太郎の地獄めぐり」(読み切り)小学館入門百科シリーズ
『新編ゲゲゲの鬼太郎』(全48回)週刊少年マガジン
『鬼太郎地獄編』(全4話)月刊少年マガジン
『鬼太郎国盗り物語』(全28回)月刊コミックボンボン、月刊デラックスボンボン
 
 
 
※ ルート0
 
 上記すべてのルートを完全否定した独立世界線。
 
「鬼太郎霊団」(第1話打ち切り)ビッグゴールド
「セクハラ妖怪いやみ」(読み切り)週刊漫画サンデー
 
 
 
 
 
『スポーツ狂時代』から引き継いだ『新鬼太郎』第1話で目玉親父がセーター姿の鬼太郎に「チャンチャンコと下駄を着けろ」と言うのですが、その後のコマでは鬼太郎の背丈が縮んでいるという“則巻アラレちゃん現象”が起きています!
 だからと言って、大人の猫娘の件もあるので、『新鬼太郎』を永遠のショタ世界線に直結させるわけにもいかないと思うのですよね……。
 
『大ボラ鬼太郎』は少年姿の鬼太郎ではありますが、掲載が青年誌であり内容も大人向けなので『続鬼太郎』のお仲間と解釈しました。
 
 鬼太郎の妹として登場した雪姫は『雪姫』シリーズのみのキャラなので、「妹がいる世界線」と「妹のいない世界線」に分岐するという考えかたもできます。
 ですが読んでみて、雪姫はただの妹ではなく何か裏がありそうな感じがしますし、作品そのものが掲載誌の休刊で実質的な打ち切りになっていますので、本当なら雪姫の真相が最後に明かされる予定だったのではないかと、私は思っています。
 ですので脳内で「雪姫は出て行った」とし、後の『新編』などと同一世界線と解釈しています。
 
 
 
 
 
 紙芝居時代の『鬼太郎』については何も知りませんので、ここで触れることはいたしません。
 つか、触れようがありませんから。(;^_^A
 
 なお、兎月書房の『墓場鬼太郎』には、「幽霊一家」および「墓場鬼太郎夜話」の“続き”となる作品があります。が、これは原稿料未払いを理由に水木サンが兎月書房を見限った後に、兎月書房が『鬼太郎』の権利を主張して別の漫画家さんに描かせたものです。
 ある意味、上で述べました“ルート1”の世界線上にあるとも言えますし、当然のこと水木サンによる佐藤プロ版とは分岐した世界線なのですが、そもそも水木作品に該当しないので、ここではスルーします。内容も知りませんし。
 ちなみに、この他者による『墓場鬼太郎』はと言うと、荒俣宏さん曰く「その差は歴然」「何もない」、京極夏彦さん曰く「違いは歴然」「暴挙」、だそうです。
 
 また、コミックボンボン連載の『最新版ゲゲゲの鬼太郎』は、水木サンではなく水木プロ主導の作品とのことなので、これもスルーさせていただきました。
 
 
 


 
 
 以下に鬼太郎の生誕からの流れを、あくまでも私個人の考えでまとめます。
 すべての鬼太郎が同一人物であるとして、各作品をそれぞれ世界線の分岐と捉え、RPGやAVGの攻略マップっぽくしてみました。
 
 なお、少年マガジンに掲載された画報「妖怪大作戦 鬼太郎のおいたち」にて、鬼太郎を育てたのは「血液銀行の社員」としかありませんが、ここでは便宜上あえて「水木」ということにしています。
 
 
 

調布市下石原に在る廃寺の墓地で誕生
  ↓          ↓
 生まれつき隻眼    両目あり
  │  │       ↓
  │  │     水木のせいで片目を潰す────┐
  │  │                    │
  │  ↓                    │
  │ 目玉親父が水木に鬼太郎の世話を頼む─────┼──┐
  │                       │  │
  ↓                       │  │
水木宅に侵入、水木家に育てられる          │  │
  ↓                       │  │
墓場遊びを咎められる                │  │
  │    │                  │  │
  │    ↓                  │  │
  │   家出する──→放浪の旅         │  │
  │    │     (少年マガジン特別編)  │  │
  │    │                  │  │
  │    ↓                  │  │
  │  水木が警察に通報────┐        │  │
  │              │        │  │
  ↓              │        │  │
水木が地獄の片道切符を入手    │        │  │
  ↓              │        │  │
水木が地獄に落ちる        │        │  │
  ↓              │        │  │
水木の母が発狂          │        │  │
  ↓              │        │  │
鬼太郎父子が水木宅を乗っ取る   │        │  │
(兎月書房版、三洋社版)     │        │  │
                 │        │  │
                 ↓        │  │
             水木が地獄に落とされる  │  │
             (月刊ガロ版)      │  │
                          │  │
                          │  │
水木宅に侵入、水木家に育てられる←─────────┘  │
   ↓                         │
ねずみ男とコンビ結成                   │
(佐藤プロ版、東考社版)                 │
                             │
                             │
水木家に育てられる←───────────────────┘
  ↓
気味悪がられ追い出される
(鬼太郎のおいたち)
  ↓
ゲゲゲハウスやゲゲゲの森など各地を転々──┐
(少年マガジン版、ベトナム戦記)     │
  │                  │
  ↓                  │
南の島に移住               │
(その後の鬼太郎)            │
  ↓                  │
来日して事件を解決、南の島に戻る     │
(死神大戦記)              │
                     │
                     │
妖怪アパートに住む←───────────┘
(少年サンデー版)
  ↓
緩く生きてる
(鬼太郎とねずみ男)
  ↓
世界一周に出る
(世界お化け旅行)
  ↓
帰国する
(妖怪ロッキード)
  ↓
猫は強し
(三味線猫のなげき)
  ↓
過去にタイムトラベル─────┐
(蓮華王国)         │
  │            │
  ↓            │
少し成長する         │
(挑戦シリーズ)       │
  ↓            │
高校生になってセーター姿   │
(続鬼太郎)         │
  ↓            │
能力を失う          │
(スポーツ狂時代)      │
  ↓            │
チャンチャンコ姿に戻る    │
(新鬼太郎)         │
  ↓            │
ねずみ男に扶養される     │
(大ボラ)          │
               │
               │
成長しない←─────────┘
(海坊主先生)
  ↓
妹の登場
(雪姫)
  ↓
地獄を観光
(地獄めぐり)
  ↓
シーサーが仲間入り
(新編)
  ↓
母との再会
(地獄編)
  ↓
兄の登場
(国盗り物語)



どの作品ともリンクせず完全独立
(鬼太郎霊団)




 
 鬼太郎が成長した青年誌連載分と、それより後に発表された少年のままの鬼太郎の『雪姫』や『新編』との位置関係については、いろいろな説があると思います。
 ですが、「『新編』は鬼太郎が成長しないのではなく、鬼太郎の少年時代を描いているだけ。よって時系列的には『続鬼太郎』より前の事件だ」という考えだけは成立しないと思います。
 
 根拠は、水木翁の作風にあります。
 
 水木翁は作品の中に時事ネタや流行り物を入れる傾向が強く、そこから物語の年代が判る仕組みにもなっています。
 
 例えば、貸本版「吸血鬼と猫娘」にてキャット寝子が歌う歌詞の「コラソンコラソン、レメロンレメロン」。
 これは作品発表当時にヒットしていた森山加世子さんの『メロンの気持ち』から拝借しています。「レメロン」は本当は「デ・メロン」なんですね。
 
 あるいは、エピソードによって登場してくる総理大臣が、ちゃんとその時代時代に合わせている。
 貸本版「霧の中のジョニー」(1962年)で狙われたのは池田総理。
 少年マガジン版「妖怪獣」(1967年)で狸に政権を奪われたのは、どう見ても佐藤総理。
 少年サンデー版「ダイダラボッチ」(1971年)で日本列島が喰われてアタフタしていたのも、どう見ても佐藤総理。
 ともに青年誌掲載の『挑戦シリーズ!』(1977年)と『新鬼太郎』(1978年)には、福田総理と大平氏がコンビで出てきます。
 そして、少年の鬼太郎に戻っての『国盗り物語』(1991年)では海部総理のそっくりさん。
 さらに、『鬼太郎霊団』(1996年)では「村山田」という名前の村山総理のそっくりさんが登場。
 
 というように、当時の時事を反映させるのが水木作品の特徴です。
 よって、鬼太郎や猫娘が青年である『続鬼太郎』や『スポーツ狂時代』は、鬼太郎や猫娘が子供姿である『国盗り物語』より古い年代の事件であると言え、辻褄を合わせるには違う世界線とするしか方法がありません。
 昭和の出来事を平成に描くからと言って舞台背景を平成にしては、何も考えていないと言われても仕方ありませんからね。時代劇にテレビやケータイを出さないのと同じことです。
 
 


 
 
 参考資料:
   講談社漫画文庫『ゲゲゲの鬼太郎 少年マガジン/オリジナル版 5』
      巻末「鬼太郎作品総リスト
 
 
 
 
 
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