しなないからだ


作 妖之佑

 
 
 
 
 博士は思いました。
 ――わしの命など、たかが知れている。この偉大な研究を完成させるには、とても足りぬ。
 
 博士は焦りました。
 ――このままでは、せっかくここまで築いてきた研究が、すべて無駄になってしまう。
 
 博士は考えました。
 ――この研究は、人類にとって重要なものなのだ。完成させるためには、手段は選ばぬ。
 
 そして、博士は決意しました。
 ――悪魔に頼もう。
 
 
「悪魔よ。わしの願いを聞き入れてくれ。わしの命を、研究の完成まで、長らえてくれ。研究が完成すれば、この魂、進呈する」
 怪しい書物から得た知識で、毎夜、悪魔に祈りを捧げました。
 
 
 そんなことの続いたある夜です。
「気に入ったよ。願いを叶えてあげるね」
 二頭身にクリクリした目、そして尻尾という、愛らしい姿の小悪魔が現われ、博士に言いました。
「研究が終わるまで、死なないようにしてあげるよ」
 そう言い残し、ウィンクして小悪魔は消えました。
「ありがたい!」
 博士は嬉々として研究に打ち込みました。
 
 
 それから何十年経ったことでしょう。
 博士の家は長い間の風雪にボロボロになり、庭も草ボウボウ。
 そして、そこの前を通りかかる人々は、必ずこう囁くのです。
「ほら、見てごらん。あれが噂の……」
 
 
 今夜も博士の研究は続きます。
 書斎の机に向かい、月の光の下、ペンを走らせるガイコツの姿は、近所の名物となっているのです。

 
 
 
 
葉

 
 だいぶ前に、某サイトの掲示板の書き込みから発想を得て、ずーっと考えていた話です。今日、思い立って一気に書きました。
 
2001.6.20.

 
葉

 
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庭に出る
 
 
 
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