黒い結末

 
 
 
 
「どうだった? お客さんは」
 保護した旧式宇宙船から戻った相棒に、コックピットの節足動物が声をかけた。
「ああ。だいぶ興奮しているようだけど、まあ、あれならましなほうさ」
 先程握手した手をスプレー液で消毒しながら、答える相棒。
「はは。そう言えば、こないだ球状星団の端っこで見つけた老人は大暴れしてくれたからなあ」
「年寄りが石頭なのは、どの種族でも同じってことよ」
 そう言ってドサッと座席に座る。そして横を見て──
「彼女を保護センターに入れたら、次はどこだ?」
「たしか……バーナード星方面だったっけ」
 予定表を開きながら答える。
「おいおい、それじゃ今日中にゃ帰れないぜ。芸能人水泳大会があるのによー」
「なんだ。まだヴィデオ買ってないのかよ」
「けっ。女房のヤツがよ。ガキの服に使っちまったのよ。俺の小遣いカットしてだぜ」
「そりゃお気の毒」
 そんな雑談をかわしていた二人だが、ふと真顔になった。
「こんなことしてて、意味あるのかな?」
「判らんよ。でも」
「でも?」
「迷子のまま放っとくわけにもいかんだろ。あんなのでも、俺たち地球人の先輩、先史人類なんだからよ」
「ったく、見通しのない宇宙計画なんてすんなってんだ。あいつら、可哀想だぜ」
「だから保護したうえで、生涯、夢を見てもらうのさ」
「俺たちの本当の故郷は伏せたままでか」
「知らせちゃ、もっと可哀想さ」
「だよなー」
 うなずきながらパネルを操作する。
 そんな会話も露知らぬ真帆を乗せた古びた船と、それを牽引した“三葉虫”は、星の中をゆっくりと動きはじめたのであった。

 
 
 
 
星

 
 2002年9月25日に、ひじりあやさんに進呈したものを、あらためてここに掲載させていただきました。
 
2007.8.7.

 
星

 
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庭に出る
 
 
 
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