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第百二十六段
「ばくちの負きはまりて、残りなく打ちいれむとせむにあひては、打つべからざる。たちかへり、つづけて勝つべき時のいたれると知るべし。その時を知るを、よきばくちといふなり」と、或る者申しき。
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第百八十一段
「ふれふれこゆき、たんばのこゆき」といふこと、よねつきふるひたるに似たれば、粉雪といふ。「たまれ粉雪」といふべきを、あやまりて、「たんばの」とはいふなり。「かきや木のまたに」とうたふべしと、ある物しり申しき。昔よりいひけることにや。鳥羽院をさなくおはしまして、雪の降るにかく仰せられけるよし、讃岐典侍が日記に書きたり。
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第二百七段
龜山殿建てられむとて、地をひかれけるに、大きなる蛇、藪も知らずこりあつまりたる塚ありけり。この所の神なりといひて、ことのよしを申しければ、いかがあるべきと勅問ありけるに、「ふるくよりこの地を占めたる物ならば、さうなく掘りすてられがたし」と、皆人申されけるに、このおとど一人、「王土をらむ蟲、皇居を建てられむに、何のたたりをかなすべき。鬼神はよこしまなし。とがむべからず。ただみな掘り捨つべし」と申されたりければ、塚をくづして、蛇をば大井川に流してけり。さらにたたりなかりけり。
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第二百十八段
狐は人にくひつくものなり。堀川殿にて、舎人が寝たる足を狐にくはる。仁和寺にて、夜、本寺の前をとほる下法師に、狐三つ飛びかかりてくひつきければ、刀を抜きてこれをふせぐ間、狐二疋を突く。一つはつきころしぬ。二つは逃げぬ。法師はあまた所くはれながら、ことゆゑなかりけり。
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吉田兼好『徒然草』
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